「叱らない子育て」も「怒鳴る子育て」も、どちらも極端
「叱らない子育てがいいって聞いたけど、本当にそれでいいの?」「つい怒鳴ってしまって自己嫌悪…」そんなふうに悩んでいる方は少なくありません。
子育ての情報があふれる今、「叱らない」と「厳しくしつける」の間で揺れるのは、むしろ自然なことです。
私は元保育士として多くの親子と関わってきましたが、声かけで大切なのは「共感してから線引きする」という順番だと感じています。
この記事では、保育現場で実際に使っていた声かけのコツと、家庭での勉強の場面にも応用できる考え方をお伝えします。
共感と線引き、順番を間違えると伝わらない
子どもに何かを伝えたいとき、つい最初に「ダメでしょ」「やめなさい」と言ってしまうことはありませんか。
でも、子どもの立場で考えてみると、自分の気持ちを受け止めてもらう前に否定されると、それだけで心のシャッターが閉じてしまいます。
わかってはいるけど、毎回冷静になんて対応できないよ…
毎回完璧にできなくて大丈夫です。「順番を意識する」だけで、伝わり方がかなり変わりますよ。
ポイントはシンプルで、「あなたの気持ちはわかったよ」→「でも、ここはこうしようね」という順番です。
保育現場でよくある場面から
保育園では、お迎えの時間になっても「まだ遊びたい!」と帰りたがらない子がよくいます。
そんなとき、「もう時間でしょ!」と引っ張って帰ろうとすると、子どもは余計に泣いて抵抗します。
でも、「まだ遊びたかったんだね」とまず共感してから、「でも今日はおしまいね。明日また遊ぼうね」と伝えると、すんなり気持ちを切り替えられることが多いんです。
ここで大事なのは、共感=言いなりになることではないということ。「遊びたかったんだね」と気持ちは受け止めるけれど、「帰る」という線引きは変えません。
もし泣けば思いが通ると子どもが学んでしまうと、「泣く=交渉手段」になってしまいます。これは子どものためにもなりません。
矛盾した気持ちを抱えるのは、あなただけじゃない
子育てをしていると、正反対の気持ちが同時に湧いてくることがあります。
- 親の顔色をうかがう子にはなってほしくない。でも、まわりの空気を読める子になってほしい気持ちもある。
- 自分の時間がほしい。でも、子どもとの時間も大切にしたい。
- 子どものことが大事でかわいいのは本当。でも、家政婦のように扱われると気持ちがすり減る。
こういう矛盾は、子どもを大切に思っているからこそ生まれるものです。
完璧な親なんていません。揺れながら、迷いながらでいいんです。むしろ、揺れている自分に気づけている時点で、ちゃんと子どもと向き合っている証拠だと思います。
「ちゃんとしつけなきゃ」のプレッシャー
まわりからの目が気になることもあります。「あそこの家は甘やかしている」「ちゃんとしつけていない」と思われたくない。そんなプレッシャーから、つい厳しい言葉が出てしまうこともあるかもしれません。
でも、子どもの前で無理に「完璧な親」を演じ続けると、子どもも「親の前ではいい子でいなきゃ」と、顔色をうかがうようになることがあります。
本当に目指したいのは、子どもが安心して自分の気持ちを言える関係。そのために、親自身も完璧でなくていいと思えることが、実はいちばん大切なのかもしれません。
頑張っているのに報われない、と感じるとき
子どものやりたいことを応援したい。習い事も、教材も、できる限りやらせたい。でも、お金にも気力にも体力にも限界があります。
それでも、なんとかやりくりしている。仕事も家事もこなしながら、子どものために時間とお金を工面している。そんな毎日を送っているのに、子どもから「ありがとう」の一言もないと、ふと虚しさを感じることがあるかもしれません。
親が一方的に我慢して頑張り続ける関係は、長くは続きません。家族のなかで「ありがとう」が自然に行き交う関係が、結局はいちばん心地よくて、長く続くものだと思います。
「ごはん作ってくれてありがとう」「今日もお仕事おつかれさま」。そんな小さな言葉を、親のほうから先に見せていくと、子どもも少しずつ真似するようになります。感謝は、教えるより見せるほうが伝わりやすいものです。
「勉強しなさい」を手放す声かけのコツ
この「共感→線引き」の順番は、勉強の声かけにもそのまま応用できます。
たとえば、子どもがなかなか勉強に取りかからないとき。「いつになったら勉強するの!」と言いたくなる気持ちは痛いほどわかります。
でも、ここでも順番を意識してみてください。
NGになりやすい声かけ
- 「早く勉強しなさい」→ 命令口調で反発を招きやすい
- 「みんなやってるよ」→ 比較されると自信をなくす
- 「このままだと受験に落ちるよ」→ 不安をあおっても動機づけにはなりにくい
試してみたい声かけ
- 「今日は学校どうだった?疲れてる?」→ まず今の状態を聞く
- 「今日はどこまで進んだ?」→ やったことを認める入り口になる
- 「何時から始める?自分で決めていいよ」→ 自分で決めたことは守りやすい
声かけを変えるだけで、本当に勉強するようになるの?
劇的に変わるというよりは、少しずつ「自分で動ける子」に近づいていく感じです。声かけは即効薬ではなく、漢方薬のようなものですね。
大切なのは、子どもの気持ちを聞いたうえで、やるべきことは伝えるというバランス。「共感だけ」でも「指示だけ」でもなく、その両方をセットにすることで、子どもも納得しやすくなります。
共感と線引きを両立させる3つのポイント
① 気持ちを言葉にする
「嫌だったんだね」「やりたくない気持ちはわかるよ」と、子どもの感情を代弁するだけで、子どもは「わかってもらえた」と感じます。
気持ちを受け止めてもらえた子どもは、そのあとの言葉を聞く余裕が生まれます。
② 線引きは短く・穏やかに
共感のあとに伝えるルールや約束は、長々と説教せず、短い言葉で伝えるのがコツです。
「でも、宿題は寝る前に終わらせようね」「今日はゲームはここまでにしよう」。これだけで十分です。理由の説明は、子どもが落ち着いているときに改めて伝えるほうが届きます。
③ 「できたこと」に目を向ける
子どもが少しでも約束を守れたときは、それを言葉にして伝えてみてください。「自分で時間を決めて始められたね」「昨日より早く取りかかれたね」と、小さな変化に気づくことが次の行動につながります。
「できていないこと」を指摘するより、「できたこと」を認めるほうが、子どもの行動は変わりやすいです。
勉強だけじゃない。「生きていく力」も声かけで育つ
声かけというと、つい勉強のことばかり意識しがちですが、子どもに身につけてほしい力は学力だけではありません。
たとえば、食事の片づけや洗濯物をたたむこと。小さなことでも、家族の一員として自分の役割がある経験は、将来の自立につながります。
「お皿を運んでくれて助かったよ」「洗濯物たたんでくれたんだね、ありがとう」。こんな声かけが、子どもの中に「自分は家族の役に立てる」という実感を育てます。
勉強ができても、自分のことが自分でできなければ、社会に出てから苦労します。生活の中で「できること」を少しずつ増やしていくことも、立派な教育です。
家事の分担は、子どもを信頼しているからこそお願いできるもの。「あなたならできるよ」という親の信頼が、子どもの自信と生きていく力を育てます。
勉強の習慣づけは「環境」の力も借りる
声かけを工夫しても、勉強の習慣がなかなか定着しない…というときは、家庭だけで抱え込まず、外の力を借りるのも一つの方法です。
たとえば通信教育は、毎日の学習量が決まっているので、「今日はここまでやろう」という声かけがしやすくなります。親が勉強の中身を管理しなくても、教材が学習のペースメーカーになってくれるのは助かります。
小学生と中学生では声かけのコツが違う
小学生のうちは「いっしょにやろう」「ここまでできたらおやつにしよう」など、親がそばにいて声をかけることが効果的です。まだ自分で学習を管理するのが難しい年齢なので、ペースメーカーとしての関わりが助けになります。
一方、中学生になると「自分で決めたい」という気持ちが強くなります。「何時から始める?」「今日のゴールはどこにする?」と、選択肢を渡して本人に決めさせるほうが動きやすくなります。
どちらの年齢でも共通しているのは、「やったことを認める」声かけ。テストの点数ではなく、「今日も机に向かえたね」「自分で計画を立てられたね」と、過程に目を向けることで子どもの自信が育ちます。
声かけだけじゃなくて、仕組みで解決できる部分もあるんだね。
そうなんです。親がすべてを背負わなくていい。頼れるものは上手に頼って大丈夫ですよ。
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まとめ|揺れながらでも、子どもには伝わっている
声かけに正解はありません。同じ言葉でも、子どもの状態やタイミングによって響くときと響かないときがあります。
それでも、「共感してから線引きする」という順番を意識するだけで、親子のやりとりは少しずつ変わっていきます。
うまくいかない日があっても、自分を責めすぎないでください。怒鳴ってしまった日も、あとから「さっきはごめんね」と言えたら、それで十分です。
完璧じゃなくていい。迷いながら、揺れながらでも、子どもはちゃんと見ています。あなたが関わろうとしていること、それ自体が子どもの安心につながっています。
今日からひとつだけ、声かけの順番を意識してみませんか。きっと小さな変化が生まれるはずです。
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